伊豆諸島東方の太平洋で海上自衛隊のヘリコプター2機が墜落した事故は、現時点で機体の異常は確認されておらず、事故原因は不明だ。27日で発生から1週間。過去にも事故が繰り返され、安全対策が問われる一方、任務はますます多様化しており、現場の疲弊を指摘する声もある。安全との両立は容易ではない。
事故は、洋上での夜間飛行中に起きた。
20日午後10時38分ごろ、伊豆諸島東方の太平洋で訓練飛行をしていた哨戒ヘリ「SH60K」1機からの通信が途絶え、同11時4分にはもう1機とも通信が途絶していることが判明した。防衛省は現場の状況から、2機は空中で衝突し、墜落したとみている。
24時間態勢での捜索が続くが、乗員計8人のうち1人が死亡し、7人の行方がわかっていない。
防衛省によると、当時、ヘリは計3機で潜水艦を探知・追尾する「対潜水艦戦」の訓練を行っていた。政府関係者によると、2機はこのとき、互いの位置や探知情報などを共有する通信システム「僚機間リンク」を接続していなかった。
訓練は、護衛艦部隊のトップが数年に1度、対象となる部隊を評価する「査閲」の一部だった。電波の発信を最低限に抑え、互いの位置は目視とレーダーなどで確認しながら夜間に潜水艦を追尾するという難易度の高い訓練だったとみられる。
リンクを切っていれば、システムに備えられた異常接近を知らせる警報も作動しない。ただ、海自によると、ヘリには他にも危険を警告するシステムがある。夜間に互いを目視やレーダーで確認しながら飛ぶことは珍しくないといい、防衛省関係者は「僚機間リンクをつなげていれば安全性は高まるが、それが事故の主要因ではない」と話す。
海自では過去にも夜間訓練中の事故がたびたび起きている。2021年7月には鹿児島県・奄美大島沖での訓練中に2機のヘリの回転翼が接触した。海自はこの事故を受けて、複数のヘリによる訓練では「飛行高度を分けて物理的に衝突を避けるようにする」などの再発防止策を打ち出した。
だが、空中衝突したとみられ…